20世紀少年
これだけ集中して漫画を読んだのは何年ぶりだろう・・・
高度経済成長真っ只中の昭和40年代、原っぱに作った秘密基地で少年達は遠い未来を夢見て空想物語を書き綴った。
時は流れて20世紀の終わり、少年達は大人になり子供のころの夢も忘れかけていた。
そんなある日、世間を騒がせるさまざま事件が起こる。その影には”ともだち”という謎の人物の影が・・・。
その事件が、自分たちが少年時代に描いた物語と一致していると気がついた時、大人になった少年達の運命が動き始めた。
普段あまり漫画は読まないのだが、このプロットと「20世紀少年」というタイトルの語感、昔の石ノ森漫画を彷彿させるノスタルジックなタイトルロゴがなんとなく気になっていた。
実写映画化されるという情報を聞き、事前に原作を読んでおこうと思い、全巻一気に大人買いして全24巻を6日で読破した。
1999年の連載開始から何度かの休載を挟みのべ8年続き2006年に完結したのだが、その最終回にはかなりの賛否両論があったらしい。
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物語の核心だった”ともだち”の正体が最終回に明かされたが、「はぁ?」「誰それ?」と思った読者が多いらしい。張り巡らされた伏線を回収できず、多くの謎を残してあっさり終わった最終回にかなりの不満が出たらしい。
私はというと、案外そういう風に謎が残って最後の解釈をこちらにゆだねられ、それについてあぁでもないこぉでもない、と考えるのが好きな口なので、実に面白い作品だと思った。
確かに8年もかけて読み続けていた読者にとっては、いきなりそんな名前が出てきても「誰それ?」と思ってしまうのも理解できる。6日間で集中して読んだ私も一瞬「ん?誰だっけ?」と思ったがまだ記憶が鮮明だったのですぐに思い当たって、「なるほど」と思えた。
まぁそんなわけで、私なりの感想や解釈を書いてみたい。
この先は、ネタばれありなのでご注意を・・・
地元の小中学校時代の仲間達とたまに会って呑みながら話していると、大概当時の思い出話になる。
そんな時に必ず出るのが「あの時○○くんがさぁ」「○○くんって誰だっけぇ?」「ほら、あの時皆で云々」なんていうやりとり。
楽しかった思い出は忘れない、と思っていたのだが、その時の友の顔は意外と忘れていってしまうことがあるものだ。
この物語の中に連綿と流れているのも、そんな少年時代の思い出(記憶)の曖昧さ。
つい最近まで少年時代だった若い世代の読者にはあまりピンと来ない感覚かもしれないが、ケンヂ達より若干若いが同世代の私くらいの年齢になると、そういうものをヒシヒシと感じてしまう。
そんな思いを感じる中での”ともだち”の正体。
ケンヂがした万引きで、あらぬ疑いをかけられてしまったカツマタくん。
その結果、泥棒呼ばわりされ散々いじめられ無視されて、登校拒否でもすれば「死んだ」なんていう噂を立てられる。
子供なんて単純だし、案外残酷だ。そんないい加減な噂も、友達の友達へと伝わるうちにあっという間に事実の如く広まってしまう。
ケンヂ自身はというと、自分のせいでカツマタくんがいじめられることになってしまった事に当時は贖罪の気持ちはあったのだろう。
ただ言い出せないまま、時が経つにそんな気持ちも記憶の底に忘れていったのだと思う。
ケンヂが”ともだち”の正体を知った(思い出した)のは、血の大晦日の後記憶喪失になり全国を放浪していた時だろう。
19巻11話でこんな告白をしている。
「東京にいると怖い思い出が戻ってきそうで、また逃げた。逃げ続けた。(中略)記憶が戻った、いや逃げ切れなくなった。
逃げ切れなくなって、三日三晩山の中で泣き明かした。(中略)その時決めたんだ。俺は正義の味方になる」
恐らくこの時ケンヂは”ともだち”の正体がカツマタくんであり、事の発端が自分の万引きにあった事を知るのだ。
少年時代「正義の味方になる」なんて言っていたのに、実は重大な過ちから逃げていた。
それに気づいて三日三晩泣き明かして、そして事実を明かそう(正義の味方になろう)と決心したのだろう。
少年時代の些細な言葉や行動が、他人の人生に大きな影響を与えることがある。
そんなことがあった時、逃げ出さずに向き合って欲しい、そんなメッセージもこの作品にはあるのではないだろうか。
そうしてケンヂは過去の過ちを誤り、それ以外にも逃げていたいろいろな事に向き合うことになったのだ。
バンド活動の再開、そしてユキジへの告白・・・
それにしても、この「少年時代の思い出(記憶)の曖昧さ」をここまで感じさせたこのストーリーはすばらしい。
最初からこのエンディングまで考えて(いたかどうかは作者にしかわからないけど)8年もの長い時間をかけて纏め上げたというのはすごいことだ。
逆に「記憶の曖昧さ」を共感させるがために8年もの時間をかけたのか、とさえ思ってしまう。
そして、映画化。
今から楽しみではあるのだが・・・
第1章全キャストが発表されたが、藤井隆、山田花子、タカアンドトシ、オリエンタルラジオの名前が・・・
役名が無いのでかなりの脇役なのだろうが、実写版「デビルマン」みたいに意味の無いカメオ出演の多さでストーリー全体をぶち壊すような、そんなことにならないことだけを祈る。
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